ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「ユノ様!・・・テト様といらっしゃったんですね」
少し驚いたような顔。
「うん。テトが連れてきてくれたの」
「ユノ様は本がお好きなのですか?」
「うん、好き・・・。寂しいことや辛いこと、全部忘れさせてくれるから・・・」
漆黒の瞳が暗さを宿している。
「ユノ・・・?」
「あ、ごめんなさい!・・・えっと、ミーシャ、この紅茶はどんな味なの?」
思わず元の世界にいた頃を思い出してしまったゆのは、慌てて話を変えた。
「・・・こちらは、ユベリアという柑橘系の紅茶です。クッキーは紅茶に合わせた味付けにしています」
ユベリアなんていう紅茶は聞いたことがない。
風に乗って香ってくる紅茶の香りーーー
「ほんとだ!柑橘系の香りがする・・・」
みかんのような、グレープフルーツのような、甘酸っぱい香り。
クッキーは形がいろいろあってとても可愛らしい。
「ありがとう、ミーシャ」
ゆのに言われたミーシャはにっこり笑って、
「またなにかあったらお呼びください」
と言って立ち去った。
「飲んでごらん? 落ち着くよ?」
ブルーの瞳が優しく促す。
紅茶を手にとったゆのは、ひとくち口に運んだ。
口に広がるのは香りと同じ甘酸っぱさ。少し甘くて、砂糖のようなものも入っているのかもしれない。
「おいしい!」
「よかった・・・」
本の話をミーシャに聞かれて暗くなったゆのを、テトは気にしていた。
「ねぇ、ユノのいた世界はどんなところなの?」