ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

耳が、テトの言葉を拾う。




ドンナ、セカイ、ダッタノーーー?




思い出す。
漆黒の瞳が見開かれる。
それと同時に、無意識に溢れる涙。
声にならない身体の震え。



「っ!」



ーーーぎゅっ


「ごめん。ユノ、ごめん」



強く、強く、抱きしめられる。


「そんなこと聞いたら、帰りたくなっちゃうよね? ・・・ごめん」



謝らないで、テト。
だって私、帰りたくないんだもん。


ゆのは伝えられない言葉を飲み込んだ。


「ごめんね、取り乱しちゃって・・・」



ゆのの身体の震えはまだ微かに残っていたが、頬を伝っていた涙は止まっていた。



異世界から来てオズ兄様の側室となったユノが、元の世界に帰りたいと言うきっかけを作ってしまった・・・


テトの心は後悔でいっぱいだった。


< 42 / 208 >

この作品をシェア

pagetop