ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
その頃ーーー
オズヴェルドは、ゆのの部屋を訪れていた。
ーーーコンコンっ
ーーーシーン・・・
返事がないことを不審に思い、部屋の扉をそっと開ける。
「ユノ・・・?」
ゆのの残り香で溢れるその部屋に、宿主の姿はなかった。
オルフェを連れていくなら、と条件付きでゆのに自由行動を与えたが、数日は動きがなかった。
何処に行ったんだ・・・?
数個の部屋を移動するだけだったゆのが、どこに行ったかなんてオズヴェルドには想像がつかない。
オズヴェルドは胸のポケットから小型の鏡を取り出した。
テトとデザインが似ている、アンティークチックなお洒落な鏡だ。
「ミーシャはいるか」
しばらくして小型の鏡から返事が聞こえる。
「はい、オズヴェルド様」
「ユノを探している。・・・何処にいるか知らないか?」
「ユノ様でしたら、テト様と図書室のテラスにいらっしゃいました」
「!?・・・テトと、だと?」
「はい」
「オルフェはどうした?」
「・・・テト様が護衛はいらないとおっしゃったと聞きました」
「・・・そうか」
鏡を通して気まずい雰囲気が流れる。
「あのっ」
居た堪れず、ミーシャは口を開いたが、オズヴェルドに遮られた。
「それならば、オルフェは必要ないな」
それだけ言うと、オズヴェルドは鏡を閉じた。
自由に城の中を歩きたいと言ったのは、テトと会うためなのか・・・?
オズヴェルドの胸は軋んでいた。