ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「カルディア嬢が?・・・通すんじゃないぞ」
ゆのの手をそっと離したオズヴェルドは、部屋の扉に向けて歩き出した。
少し寂しく感じるのはなぜだろう?
戸惑いながらもゆのはオズヴェルドを見送る。
ーーーガチャッ
「すまない。待たせ」
「オズヴェルド様!」
扉が開いた瞬間に、グリーンの何かがオズヴェルドに抱きついた。
咄嗟にその何かを腕で抱きとめるオズヴェルド。
よく見ればそれは長いストレートの髪を持つ女で、黄色の瞳を輝かせてオズヴェルドを見つめている。
「カルディア嬢・・・」
今さっきまで、私がその腕の中にいたのに。
黒い何かがゆのの心を覆っていく。
「お会いしたかったのですよ? それなのにオズヴェルド様ったら、私以外の女を側室にしてしまったと聞くし・・・。あら、そちらは?」
やっとゆのの存在に気付いたらしい。
黄色の瞳が鋭く光る。
「・・・彼女は・・・」
「異世界から来た女・・・?」
「・・・そうだ。だが」
「もしかして、この女がオズヴェルド様の側室だとか言いませんよね?」
蔑むような言葉。
見下すような視線。
居た堪れなくなったゆのは、顔を伏せた。
異世界から来た人間がこの国の王子様の側室なんて・・・
例え真実じゃなくてもやっぱりよくないことなんだわ・・・