ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
ーーーコンコンッ
ーーーガチャッ
建前上ノックはしたが、オズヴェルドは返事を待たずに扉を開けた。
「ユノ!」
「・・・オズ」
ベッドに座っていたゆの。顔色はだいぶよくなっているようだ。
一安心したオズヴェルドは、気になっていることを聞くことにした。
「ユノ、テトがここにいたのか?」
「うん。目が覚めたらそこにいたよ」
「・・・そうか」
ミーシャにユノが元気になるようにしてほしいとは言ったが、まさかテトを連れてくるなんてーーー
やはりここを離れるべきではなかったーーー。
オズヴェルドは、そう思わずにはいられなかった。
「ユノ・・・さっきは、カルディア嬢に言いたいように言わせてしまって、傷付けてしまった・・・。悪かった」
「そんな!オズのせいじゃないよ!」
オズのせいなんかじゃない。私が異世界の人間だから・・・。それなのに、王家の側室になってしまったから・・・。
「カルディア嬢の家であるキッシュ家は、王家も無視できない権力を持っているんだ」
チョコレート色の瞳に切なさを滲ませながら、オズヴェルドは言葉を紡いだ。
「だから、強く出られない部分もある。だが、次からはそうはさせない。ユノ、お前がいつか元の世界に帰ることはわかっている。それまで・・・この世界で楽しく暮らして欲しいんだ」
オズヴェルドは、ゆのの右手を握って引き寄せると、強く抱きしめた。
ドキドキする。
でも落ち着くーーー
オズの腕の中はあたたかい。
ずっとこのままでいれたらいいのに。
そう思わずにはいられないゆのであった。