ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
やはり自分が抱いていた嫌な予感は当たっていた。テトはユノに恋心を抱いていたのだ。今までテトがこんなにも積極的に自分に意見してきたことはなかった気がする。
それほどまでに、ユノを・・・。
ゆのはゆので、この状況を理解しきれていなかった。
え?
テトが私に惹かれてる・・・?惹かれてるって、なんだっけ?えっと、えーっと・・・
「悪いがそれは許可できない。ユノは既に、俺の側室として城の人間に認識されつつある。それに、俺の側室をお前の正室にしてしまったら、クレア王妃が黙っていないと思うぞ?」
「・・・・・・」
自分の母親が何を行ってきたか知らないわけではないテトは、オズヴェルドの言葉に言い返すことができなかった。
いや、でも。
「ユノが、私を好きになったらどうするんです?」
「はっ?」
「確かにユノは、オズ兄様の側室として認識されつつある。母様だって私の正室にユノを迎えたら、黙ってはいないでしょう。それでも! それでもユノが私を好きになったら・・・ユノを手放していただけますか・・・?」
ユノが、テトを、好きになったらーーー
ユノの気持ちはユノのもの。
もしそうなってしまったら、俺の側室としているよりも、テトの正室としている方がいいだろう。
チョコレート色の瞳が思案げにゆのを見つめる。
「・・・いいだろう。もし、ユノの気持ちがお前にあるのなら、手放すと約束しよう」
「約束ですよ? オズ兄様」
オズヴェルドの言葉に満足げに笑うと、テトはユノを引き寄せた。
「そういうことだから、ユノ。私の気持ち、忘れないでいてね?」
それからゆのの耳元で囁いた。
「早く本を読み終わって。ユノに渡したいものがあるから」
そう言うとゆのを離し、優雅に失礼します、と礼をしてテトは立ち去った。