ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

パタン、と閉められた扉の後の沈黙ーーー

部屋に二人残されて気まずい雰囲気が流れる。



「あの、」


ーーーコンコンッ

せっかく勇気を振り絞って声をかけたのに、ノックの音に遮られたゆの。

渋々立ち上がり、扉を開けた。

ーーーカチャッ

そこにはオルフェと、知らない男が1人。

上品な佇まいはレヴァノンを想像させるが、この男はこげ茶色の短髪で瞳も同じ色。


「失礼します。オズヴェルド様及びユノ様。ツバル殿が参っております」

「何の用だ!?」


オルフェの言葉を聞いたオズヴェルドが怒っている。


「オズ、どうしたの?」


ゆのの問いを無視し、見知らぬツバルと呼ばれた男を見ている。


「お前の主人なら先程帰ったぞ」


お前の、主人?


「お久しぶりです、オズヴェルド様。突然の来訪の無礼、お許しくださいませ。私は今回、テト様のご用事ではなくクレア王妃の使いとして参りました」


深々と頭を下げている。

さっきの言葉からして、お前の主人というのはテトのことらしい。

それにしても、クレア王妃の使いって・・・


「クレア王妃の使いだと!?」

「そうです。オズヴェルド様並びに御側室のユノ様に招待状です」

「招待状?」

「クリストフ国王様を元気づけるためのパーティーだそうです」


確か、クリストフ国王様は心の病に臥せっていらっしゃるのよね?


「国王はパーティーなどできない病状のはずだが?」


チョコレート色の瞳がどんどん鋭くなる。


「申し訳ありませんが、私はクリストフ国王様を元気づけるためのパーティーとしか聞いておりません。期日は2週間後です」


そう言って真っ白な招待状を手渡すと、ツバルは礼をして去っていった。

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