ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
声と同時に強く抱きしめられた。
「もう、歌えない・・・」
狂ったように呟き続けるゆのの背中を、そっと優しく撫でる大きな手。
「ユノ? もう大丈夫だ・・・」
「ダメなの!歌えないの!」
トンッ、トンッーーー
幼子をあやすように背中を一定のリズムでたたく。
チョコレート色の瞳で優しくゆのを見つめるーーー
「歌いたくないのなら、歌わなくていい。またゆのが歌いたくなったときに、歌って」
「・・・歌わなくても、いい、の・・・?」
「ああ。ゆのが歌いたいときだけ歌うといい」
そうオズヴェルドが言うと、ゆのの身体の震えや動揺は治まり、ゆのは深呼吸した。
「ありかどう・・・」
キツく閉じていた瞳を開けようとしたそのとき、まぶたに感じた温かい感触ーーー
え?
思わず目を開けることを躊躇すると、その温もりは頬へと移っていく。
「もう泣くな」
ーーーちゅっ
いつの間にか流れていた涙が吸い取られる。