ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「ユノ様。この国は、クロヴァローゼという国です。貴女様は、オズヴェルド様の鏡の前で倒れておりました。オズヴェルド様はこの国の第二王子であられます。そんなオズヴェルド様の部屋で倒れている人がいるなど、前代未聞です。しかも異世界の方・・・。貴女様を見つけたオズヴェルド様は、私をお呼びになられました。意識が戻るまでは人目のつかぬところに隠しておこうと提案致しました。しかし・・・」
そこで言葉を区切り、レヴァノンはオズヴェルドを見た。
「オズヴェルド様が、〝自分で面倒を見る〟と仰ったので。 勿論、反対はいたしましたが。なにしろ、一度言い出したら頑固な王子なので・・・」
薄暗い部屋の中でもわかる、色白な肌。
それをさらに強調させる漆黒の瞳と髪。
この国では見られないこの美しさに、オズヴェルド様は好奇心を止められなかったのだろう。
長年オズヴェルドに仕えるレヴァノンは、そう思っていた。
「そんなことはどうでもいい。それでユノ、お前が目が覚めたらどうやって侵入したのか聞こうと思っていたんだが。どうやら自分の意思で来たわけじゃないし、誰かが違法と知っていながら異世界から呼んだのだろうな」
一気に説明されて、分かるところと分からないところがあるのだが。
とりあえずーーー
「私は意図的に誰かに呼ばれてここにいるってこと?」
ゆのはそれだけを確認したかった。
「そのとおりです。ユノ様は夢の続きだと思っておられるかもしれませんが、今は夢の続きではありません。貴方様の身体は実体としてここにあるのです。この世界では、鏡を使って異世界から召喚することができる者がいます。それは違法なのですが・・・。ユノ様の夢を操って、誰かがこの世界に召喚したのでしょう」
レヴァノンの答えで、これは現実なのだとゆのは理解した。
「でも、どうして私が異世界の人間だって分かるの?」
異世界なんて本当にあるとは思えないし、外国とかじゃないのーーー?
「普通に夢の中から来た、なんて言っても普通は信じない。だがお前は・・・」
言い淀むオズヴェルドの言葉をレヴァノンが引き継いだ。
「この世界では有り得ない、漆黒の瞳、髪をお持ちですので。一目でこの世界の人ではないことが分かります」