ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

カルディアとクレア王妃が怪しげな会話をしていた頃ーーー


ゆのはダンスレッスンに追われていた。

ゆのに教えることはもうないとカナリアが言ったため、1人で練習しているのだ。


しかし、1人では踊りづらい・・・。


カナリアには女性のダンスを教えてもらったが、まだ男性と踊ったことがないゆのは不安だった。


「どうしようかな・・・」

「何かお困りかい?」


急に背後から声がした。


「貴方は・・・!」

「久しふりだね、ユノ」


そこにいたのは、オズヴェルドの友人と名乗るハジだった。


「貴方にそんな風に気安く呼ばれたくないわ」


初対面で手にキスされたことを思い出して、不快感でいっぱいになるゆの。


「そんなに怒らないでよ。僕のこと忘れてなくてよかった。・・・あのときの、キスのおかげ、かな?」


いつも基本的に笑顔だから一見親しみやすく思えるけど、私は騙されないんだから!


「キス? なんのことかわからないわ」

「・・・気が強い女だな。オズはこんなののどこがいいんだ?」


顎に手を当て本気で考えているから頭にくる。


「そんなの、オズに聞きなさいよね!」

「じゃあ、聞いてみようかな」

「・・・好きにすれば」


自分で言ってしまった手前、簡単に撤回することもできない。


オズはこの人に私が本当の側室じゃないって話しちゃうのかな・・・?


それを想像すると、なんだが胸が締め付けられた。

< 76 / 208 >

この作品をシェア

pagetop