ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
カルディアとクレア王妃が怪しげな会話をしていた頃ーーー
ゆのはダンスレッスンに追われていた。
ゆのに教えることはもうないとカナリアが言ったため、1人で練習しているのだ。
しかし、1人では踊りづらい・・・。
カナリアには女性のダンスを教えてもらったが、まだ男性と踊ったことがないゆのは不安だった。
「どうしようかな・・・」
「何かお困りかい?」
急に背後から声がした。
「貴方は・・・!」
「久しふりだね、ユノ」
そこにいたのは、オズヴェルドの友人と名乗るハジだった。
「貴方にそんな風に気安く呼ばれたくないわ」
初対面で手にキスされたことを思い出して、不快感でいっぱいになるゆの。
「そんなに怒らないでよ。僕のこと忘れてなくてよかった。・・・あのときの、キスのおかげ、かな?」
いつも基本的に笑顔だから一見親しみやすく思えるけど、私は騙されないんだから!
「キス? なんのことかわからないわ」
「・・・気が強い女だな。オズはこんなののどこがいいんだ?」
顎に手を当て本気で考えているから頭にくる。
「そんなの、オズに聞きなさいよね!」
「じゃあ、聞いてみようかな」
「・・・好きにすれば」
自分で言ってしまった手前、簡単に撤回することもできない。
オズはこの人に私が本当の側室じゃないって話しちゃうのかな・・・?
それを想像すると、なんだが胸が締め付けられた。