ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「そんなことより、ダンスは大丈夫なの?」
「・・・大丈夫」
本当は自信はない。運動が得意だからダンスはすぐに覚えられても、一回も男性と練習しないのは不安なのだ。
「ダンスはカナリアに教えてもらったのかい?」
「そうよ」
「そのとき男性とは?」
「・・・踊ってない」
「なるほど。嫌がらせか」
「え?」
貴族の御令嬢もダンスを初めて習い踊れるようになったら、パーティーに行く前に男性と練習するのが普通だ。
カナリアはオズのことを好いているからな。こうやって地味にユノに嫌がらせしたつもりだろうが、本人は自覚してないぞ。
「嫌がらせってなんのこと?」
「気にするな。ユノはオズに愛されていればそれでいい」
愛されていればーーー
厳密には側室でもないし、愛されているわけでもない。
そう思い出すと、なんだか落ち込んでしまう。
そんなゆのの様子を見ながら、ハジは今までのカナリアの嫌がらせを思い返していた。
カナリアはオズと幼なじみだから、オズに好意を持って近付いて来る女たちを見事に遠ざけていた。
それも地味なやり方で、証拠も残さず・・・。
見た目や振る舞いは立派な御令嬢だから、カナリアの本性に気が付いてるのは僕だけだろうなぁ。
次のターゲットは、カルディア嬢かと思っていたのだが。
急にユノという、側室が現れて。
なんにも気が付いてないオズは、カナリアをユノのダンスコーチにしちゃって。
ほんとに見てて飽きないーーー