ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
赤い髪や金髪はいるのに、黒髪がいないーーー?
日本人の特徴であるそれらを持つ人がいないということに、ゆのは驚いた。
つまりここは、自分がいた世界とは違う世界なのだ。
「私は元の世界に帰れるの・・・?」
別に帰りたいとも思っていないけど、と胸の内でゆのは呟く。
ゆのの質問に、オズヴェルドが気まずそうに視線を逸らした。
「ユノ様・・・。この世界で異世界のものを召喚するのが違法であるのは、戻す方法が分かっていないからなのです」
そう告げるレヴァノンも心苦しそうだ。
「・・・そっか」
ゆのが落ち込んでいると思ったのだろうか。
オズヴェルドは高らかに宣言した。
「帰る方法が見つかるまで、ここにいていいぞ。帰る方法を探してやる」
「えっ・・・」
いいのだろうか?
この男は、クロヴァローゼと呼ばれるこの国の王子様で。
私は一目で違法でこの世界に来たと分かるような人間で。
確かにここを追い出されたら、行く宛はないけどーーー
「オズヴェルド様。違法を犯した人間を暴くためにも、ユノ様をこちらでお預かりすることに反対は致しません。しかし、ユノ様の存在を隠し通すことは不可能でしょう」
「そうだな。ずっと部屋にいるわけにもいかないだろうし・・・」
どうやらここに住まわせてくれるようだ。
それならば。
「私、メイドでもなんでもやりますよ?」
働かざる者食うべからず。
ゆのの日本人の性質がここで発揮される。
「メイド、だと・・・!?」
「掃除も洗濯も料理もある程度はできるし。住まわせてもらえるのなら」
「それは得策ではありませんね」
ゆのの主張はレヴァノンに遮られた。
「ユノ様は何者かによって意図的にこの世界に呼ばれたということをお忘れ無きよう。誰かに利用される恐れがあります。メイドなど人目に付きやすく、どこにでも行けるような立場では危ないです」
「ならば、どうしろと?」
オズヴェルドは静かに問いかける。
「ユノ様を・・・オズヴェルド様の側室として迎え入れるのが得策だと考えます」