ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「ありがとう」
たっぷり踊ってゆのは疲れていた。
ハジは疲れを微塵も感じさせないから、本当は疲れを出したくないのだけれど。
「君とは踊りやすいな。このお礼は、パーティーで返してもらうよ?」
「・・・?」
「僕とも1曲踊ってね」
「えっ」
嫌だと顔に出てしまっているのは否めない。しかし、練習に付き合ってもらったのも事実。
「・・・わかった」
「物分かりがいい女は好みだな」
そう言うと、ハジはゆのの頬に一瞬口づけた。
「っ! なにするの!」
「なにって、ご挨拶。親愛の印。まぁ、オズには内緒にしといてよ?」
そう言いながら手を振り去って行く。
内緒にしとくもなにも、本当の側室じゃないんだからそんなことを知ったところで、オズはなんとも思わないはず。
そんなことを考える度に、心が沈んでしまう。
結局いつか元の世界に帰ることになるのに、どうして本当の側室じゃないなんて落ち込まなきゃいけないの・・・?
馬鹿らしい、そうは思っても、そのまま動くことはできなかった。