ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
このオズの独占欲じみたものはなんなんだろう?
踊っている間は声をかけてはならないと決まっている。
こちらをちらちら見ている御令嬢方は、オズが踊り終わるのを待っているのだろう。
じゃあ、本当に疲れるまで踊るの?
嬉しいような、しかし戸惑いも大きい。
「オズ・・・」
「なんだ?」
「私っ」
ターンのために挙げた左手は、オズと軽く触れ合っているだけ。
「失礼」
その言葉と同時に、ゆのの左手を何者かが奪い取った。
「ハジ!」
驚いたようなオズヴェルドの声。
オズからゆのを奪ってダンスをそのまま続けてきたのはハジだった。
「貴方・・・」
「こうでもしないと、君と踊れないからね」
周囲がざわついている。
ダンスの相手を奪うなんて見たことがなかったからだ。
「貴方、そんなことして大丈夫なの?」
「みんな驚いているみたいだけど、御令嬢方はオズと踊るきっかけができて嬉しいだろうし、御子息だって君と踊れるチャンスができたと思って喜んでいるさ」
オズをちらりと見ると、既に御令嬢方に囲まれていた。
心配そうにこちらを見ている。
「オズは君のこと、本気で気に入っているんだね」