ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
この国の男性は皆ダンスが上手なのではないかと思うほど、テトの足取りは軽く、素敵だ。
「本は読み終わった?」
「・・・!」
「その様子だと、読み終わったみたいだね」
今は本の話はしたくなかった。この間のように、元の世界にいた頃を思い出してしまうからーーー。
「ごめん、テト、今は」
「君に話があるんだ」
ダンスの途中なのに、引き寄せられた。
このステップ、今じゃないのに!
身体に左腕が巻き付いていて、もう片方の手はぎゅっときつく握られた。
テトの顔が近付いてきて、耳元で囁かれるーーー
「君と"約束を交わしたい"」
「皆に発表がある!」
テトの言葉とクレア王妃の言葉が重なって、何を言ったのか聞こえなかった。
「めでたい知らせだ」
音楽は止み、誰もがクレア王妃を見つめている。
「オズヴェルドが正室を迎える」
「えー!」
「本当ですの?」
「どなた?」
「先程ご側室をお披露目したばかりなのに・・・」
会場内は再びざわつき出す。
「オズに・・・正室?」
「そんな話、私も聞いてない」
オズが正室を迎えたら、私はどうなるのだろう?
テトでさえ知らなかった相手ーーー