ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「カルディア・キッシュ!」
クレア王妃の口から呼ばれたその名は、クロヴァローゼ国の三大貴族のキッシュ家の娘だった。
「はい」
グリーンの髪をなびかせて、黄緑のドレスを身に纏い、颯爽と歩くその姿は、微塵も戸惑いを感じさせなかった。
「カルディアさん、なの?」
確かにカルディアさんは、オズに好意を持っているように見えた。
でも、オズはーーー?
辺りを見渡してオズを探すが、見当たらない。
「・・・オズ・・・」
ーーーどこ・・・?
「ここだ」
「っ!」
呟きと同時に抱きしめられた。
あたたかい、安心出来る腕の中へ。
「カルディアさんは・・・」
「これはクレア王妃の差し金だろう。俺は何も知らない」
「そんなことって・・・」
「テト、お前は戻れ」
「何故です?」
「俺の側室に真っ先にダンスを申し込んだんだ。お前の気持ちにクレア王妃は気付いたはず・・・。傷付けたくないなら、戻れ」
「・・・わかりました」
テトは、スッと姿を消した。