ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「オズヴェルド、こちらへ」
クレア王妃がこちらを向いて、大きな声でオズヴェルドを呼んだ。
どうするの?
カルディアさんのところへ行っちゃうの・・・?
「失礼ですが、お義母様。これはどういうことでしょう? 私には愛しい側室がいるのですが・・・」
ーーーちゅっ
抱きしめたまま、オズが髪に口づけてきた。
みんながこっちを見ているのに!
「お前にはもうそろそろ正室が必要であろう? カルディアならば身分も器量も申し分ないはずだ」
「今の私には側室のユノだけで充分です」
「その娘は側室以上にはなれぬ。カルディアを娶りなさい」
「・・・それはまだわからないでしょう?」
「その娘には身分がない」
「・・・・・・」
「オズヴェルド様・・・」
黙り込んでしまったオズヴェルドに、カルディアが声をかける。
「お待ち下さい」
凛とした声が、会場内に響き渡った。
美しい金髪が特徴的な、あの人はーーー
「カナリアさん!?」
そう、声の主は、ゆのにダンスを教えたカナリアだった。
「失礼ながらクレア王妃様。何故キッシュ家の御令嬢を、オズの正室にお選びになったのかわかりません」
「それは先程も申し」
「その条件でしたら! ・・・私も満たしております」
「っ!」
誰もが息を呑んだ。
つまり・・・カナリアさんは、オズの正室に立候補した、ということ・・・。
「そこの御令嬢に、私は器量の点で劣っているとは思いません。また身分の点では、私は王族と血縁関係がありますから」
「え!?」
オズの幼なじみとしか聞いてない。
「お忘れですか、ユノ様。この国の第3王子のヴァリオルド・カルファ・クロヴァローゼ様を・・・」
いつの間にか側に来ていたレヴァノンがゆのに言う。
「忘れてないけど・・・」
「カナリア様の名は、カナリア・カルファ・ジークフリード」
「・・・あ!」
カルファが一緒なんだ。
つまり、母方で第三王子と血縁関係があるんだわ・・・。