【企画】春の風に乗せて
「嬉し泣き?」
「うん…っ」
「なら許す!」
クリクリした大きな高木の目が三日月型になる。真っ黒な髪の毛が春風に揺れる。
ーー恋の訪れなんて、いつ来るかわからない。
知らず知らず彼のブレザーを握り締めていたことに気づいて「あ…これ…」と差し出した。
「ありがとう、渡辺」
「ううん」
ーー恋の訪れなんて、突然で、一瞬の出来事だったりする。
涙を拭うためにメガネを取る私を高木くんがまたジッと見つめる。
なに?
「渡辺、今すぐコンタクトにしろ」
「え?どうして?」
「どうしてでも!もったいねーって!」
何がもったいないのか全然わからないけど、おもしろいから笑ったのに。
「笑うな」
って、ほんとヒドイ。
桜舞う公園。
初めて感じる胸の温かさに気づいた。