Treasure
Encounter


神楽坂明美(かぐらざかあけみ)
ー17歳の春

最近失恋した。

始めて年上と付き合った。

それまでは年上と付き合う事すら

考えもしなくて毎日日替わりで

男とヤッてクラブ行って酒飲んで

そんな毎日だった。

夜の仕事にも慣れてきて

「男なんかいらない」

「信用出来るのは金だけ」

そう思ってた。

出会い系サイトに興味本位で登録して

遊べそうな男を探して

暇を潰したりもした。

あたし見た目では23歳に見えるって。

大人な女になりたくて

妙に落ち着いてみたりもした。

狙った獲物は逃さないって

友達によく言われたりもした。

一緒にいてプラスになる人としか

連まないのがあたしのポリシー。

年下なんかと一緒にいても

何もプラスになんかならないから。

夜の街で今日も暇つぶし。

もちろん一個年上の友達。

「ねぇー。誰かいい男いないー?」

「自分で探しなよ。明美モテるでしょ?」

「なーんかなー。都合いい使える男いないかなーなんてね。」

「でた!性悪女!あたしはいっくん一筋ー。」

「うるさい毎日いっくんいっくんて。出会い系サイトでも駆使するかなー。」

「いーじゃん!そおしな!うけるから!」

夜の街のど真ん中のコンビニの前で

女二人で大きい声で喋る。

「あ、トークきた!紗江見て!イケメンじゃない?!」

「なにこいつ。いくつ?どこのやつ?」

「うーんと20歳だって。三個上!住み近いらしいよ。」

「へぇー。で?なんて来たの?」

「良かったら絡みませんか?だって。ありきたり。」

「いーじゃん。テキトーに返しとけ。」

「じゃあー、こちらこそ仲良くしましょ(*^^*)とかでいっか!」

「男なんてテキトーが一番!あっ!いっくんが会いたいだってー。可愛いー!」

「キモいキモい。会いに行ってきな。あたしも帰るよ。明日仕事だし。」

「悪いね!じゃあまた連絡して!呑み行こ!じゃーね!」

「じゃーね!」

街のど真ん中のコンビニの前から

二人の影は消えた。

夜中の二時を少し回った頃

街は更に賑やかくなっていった。

街からさほど遠くない徒歩10分くらいの

ところに明美の実家はある。

ピンクと黒で統一された

アニマル柄の目立つ部屋。

煙草の匂いと香水の匂いが混ざって

少し鼻にツンとくる。

”ピロリンピロリン”

「あっ。また出会い系サイトのトークが来た。」

開くとさっきと同じ男から連絡が。

顔は切れ長な目に筋の通った鼻

髪の毛もセットしてあるプリクラが

トプ画になっている。

今頃流行りのイケメン。

「もしよかったらけー番教えてください…ってこれ電話で話すパターン?まじかー。」

そう言いつつ自分の番号を

慣れた手つきで打ち込む。

〜♪♪

携帯が鳴る。電話の着信。

画面に映るのは知らない番号。

「はい。もしもし。」

「あ、俺!出会い系サイトのやつ!わかる?!」

やたらテンションが高い人だ。

「あー。わかるわかる。」

「名前なんて言うの?俺は賢吾!」

「賢吾ねー。明美だよあーけーみっ。」

「明美ね!!可愛い名前じゃん!」

名前に可愛いも何も無いだろうと

内心思いながら会話を続けた。

「どこ住み?静岡?」

「そーだよ。そっちは?」

「静岡!近いね!今度遊ぼう!」

「あー…暇だったらね。」

曖昧な返事を返し賢吾との会話が

だるくなってきた。

「ねぇ!テレビ通話しよ!だめ?!」

「やだよ。もー眠いからまたLINEする。じゃーね。」

そう言って一方的に電話を切った。

なんで知らない奴とテレビ通話なんて

しなきゃいけないのか理解ができない。








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