バニラ
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あの日以来、

私達の関係はちょっと微妙になった。

時折見せてくれる甘い笑顔が、

私に向けられている気がする。

けど……

視線が合うと避けられて、

やっぱり
思い違いかな?



あの時に感じた好意は、

私をただの従業員として大切にしていてくれただけなのかもしれない。



はっきり自分から聞けばいいのだけど

私にはそれができない。

何かを決断するその一歩が出ない。


自分が自分で、もどかしい。


私だって初めからこういう性格じゃなかった。


普通に高校生して、

普通に大学通って、

恋だっていっぱいした。

私の性格がこんな風になった原因は、

期待に胸いっぱい膨らませて

就職して、

あっという間にリストラされたあの会社のせいだ。


私が配属された営業部は会社の花形。

意気揚々と職場に向かった私に課せられたのは、

掃除とお茶くみ。

コピーとりさえやらせては貰えなかった。

私の存在価値って?

そう思わざるをえない待遇の低さに愕然とした。


そして何より上司のセクハラ。


耐えきれずに用意した退職届は

出す事もなく、

その前に宣告されたリストラ。

私の人生に不用品と烙印を押した。


誰に惜しまれる事もなく、

引き留められる事もなく、

不良品として片づけられた。



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