バニラ
「っみちゃん……

 亜美ちゃん!」

心配そうにのぞきこむ顔は、

高校の同級だった。

「あれ?武井くん?」

「ああ、良かった。

 驚いたよ。
 バイトがお客さんが倒れたって言って、駆け付けたら、 
 亜美ちゃんだったから。」

武井敦(たけいあつし)君は高3の時のクラスメイト。

当時私には、付き合ってた彼がいたから
武井君は恋愛対象ではなかったけど、
性格良くてイケメンで、確か生徒会長とかやってた。

かなり人気があった。

朝とか、休み時間とか、
近くだった私の席は、
いつも当たり前のように誰かが占領してて、
武井君を囲んで話してた。
その輪の中には縁のない私は、
ちょっと迷惑だって思ってたんだよね。

武井君が私を『亜美ちゃん』て名前で呼ぶのは、
 私が竹居(たけい)だったから。

「武井君、ここの店長さんなの?」

「いや、ここ俺の勤めてる会社のアンテナショップで、
 この地域のマネージャーなんだ。」

確かここは、割と有名な輸入食品会社がやってたな。

そうだよね。武井君優秀だったもの。同じ竹居でもこうも違うとはね。

「カフェの店長さんすぐ迎えに来るって言ってたよ。」

「え?」

「ごめんね、勝手に携帯使わせてもらった。
 駄目だよ亜美ちゃんちゃんとロックかけとかないと?」

使った奴が言うか?

って言うか、
和臣さんが迎えに来るの?

多分バックヤードだと思うこの場所に、
バタバタと飛び込んでくる足音。

「竹居さん!」






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