バニラ
あっという間に視界に飛び込んできた和臣さんは

ちょっと怒ってる?
慌ててる?
こんな和臣さん初めてだ。

はっ!何を呑気な!
お店は?

「和臣さん、カフェは?」

「徹さんに頼んで、とんできたんですよ。」

「徹さんって、常連さんじゃないですか?
 もう、何やってるんですか。」

「それはこっちのセリフです。

亜美さんが倒れたなんて、
そんな一大事に、
呑気に店なんかしてられますか!」



ギュウッと抱きしめられた。

コーヒーの香ばしい香りが

私を包む。

「和臣さん、あの……」

「なんです?」

「苦しいです。」


「あ、

 すみません。」

「それと、初めて名前で呼んでくれた。」

「ああっすみません。竹居さんついっ……」

慌てて飛びのいて真赤になった和臣さんは、
いつも、落ち着いて大人な印象とは違って、
つい、クスッと笑ってしまった。
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