生きていかなきゃ

そしてあたしは大雅を強く抱き締めた。


「ダメだよ、死んじゃあ」


「嫌だ‼」


ここまで来ても抗う大雅。


あたしも必死に押さえる。


「母さんと父さんの所に行く!」



「絶対そんなことしたらいけないから!」



と、隣を通ろうとする犯人。


あたしは大雅を抱き締めたまま、その場で屈む。



ここで気づかれたら本当にやばいのに、大雅は暴れる。



心臓の鼓動が速まりながらも、犯人はあたしたちの存在に気づかず立ち去った。



「ひどいよぉ。
僕も死にたかったのに。

あいつに殺されたかったのに」


あたしは大雅を離した。


そして言い聞かせられるように向き合った。



「大雅は生きていかなきゃ。


ここで死んじゃったら、何のために生まれてきたかわかんないでしょ?


もっともっと一度しかない人生を楽しまなきゃ」


涙をたくさん流してる大雅に、あたしの言葉は届いてるのだろうか。



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