【企画】キミへの合図はサクラの音色
プロローグ
ピーピ―――
「ひーくんすごい!なんでそんなに上手く音出せるの?」
「はーちゃんも練習すればできるようになるよ」
ビービ―――
「うぅ……変な音しか出ないよ……」
昔、幼稚園の頃。
私は入園してすぐに、1人の男の子と友達になった。
名前は“ひーくん”。
今じゃ苗字も名前もはっきり覚えてないけど、“ひーくん”って呼んでたってことは覚えてる。
少し大人しくて優しいメガネをかけた男の子だった。
ひーくんは私を“はーちゃん”と呼んでいた。
そんなひーくんは、桜の花びらを唇に当て、優しく吹くことで音を出す遊びを教えてくれた。
2人でその遊びを“桜笛”(さくらぶえ)って呼んでた。
幼稚園の近くにあった、桜並木のところでよく遊んでたんだ。
「ひーくん、桜笛もう出来ないね……」
でも、桜は本当に一時期だけのもので、桜笛は出来なくなった。
「でも、また来年があるよ。また来年一緒にしようね」
「うん!」
そう、約束したんだ。
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