危険なアイツと同居生活
そして最後。
何とFの『F uck』のコピー。
Fの曲の中でも難関のこの曲。
蒼の友達が、蒼のために準備したのではないかというようなこの選曲。
激しいドラムが響き、複雑なベースが地を揺るがす。
それでも、やっぱり本物のFの迫力には勝てない。
気が狂うほどFを聞いていたあたしには、リズムのズレや間違いなど、細かいところに気付いてしまう。
ボーカルも苦戦していて。
顔を歪めて歌っている。
それほど……
それほど難しいこの曲。
蒼は笑顔でギターを鳴らし、優弥さんさながらの暴走を披露する。
だけどその音色は、優弥さんのものよりも温かくて柔らかい。
観客が一斉にどよめいた。
間奏の部分では、碧は絶対にしない大ジャンプをしたり、弾きながら駆け回ったり。
とにかく楽しそう。
そして、終いにはあたしと慎吾を見てピースサイン。
それでも蒼は決して外さない。
プロの意地を見た気がした。
「あれはやり過ぎだな」
慎吾は苦笑いをしていた。
そんなことで、蒼のヘルプステージは大成功に終わった。
「ヤバイね!あのギターの男」
「マジで本物のFかと思った」
口々に感想を述べる歓喜の脇をすり抜け、ホールの外に出た。