危険なアイツと同居生活





「唯ちゃんは分かってると思うけど、プロはイメージ作りも大切。

蒼が好き勝手したら、ファンの半分は消えるかもしれないよ」




あたしは慎吾を見た。

その眼鏡の奥の瞳は、少し悲しそうだった。




「ファンの期待に応えるのが、俺たちの仕事。

それは蒼もよく分かってる。

だけど……時々思い出すんだ。

太ったおっさん時代の、楽しいライブ。

下手でいい加減だけど、楽しかったあの頃を」



「そうなんだ……」




返す言葉が見つからない。

あたしは慎吾の隣で俯いていた。





「優弥はすごいと思う。

優弥のおかげで、俺たちはFになれた。

でもね、たまには休憩も必要。

今日の蒼、昔の蒼のままだった」





そうなんだ。

蒼も慎吾も、Fのメンバーとして全て上手くいってるわけではないんだね。

色んな葛藤と戦って、少しずつ成長しているんだ。




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