危険なアイツと同居生活






家に帰っても、家はしーんと静まり返っていて。




「唯ちゃん!」




子犬のように走ってくる、蒼の幻さえ見えるようだった。





開け放たれた、散らかった蒼の部屋。

床に落ちているピックやギターの弦。

楽譜の束。

そして、脱ぎ捨ててあるTシャツ。




どれも蒼の生活感が丸出しで、今にでも蒼が帰ってきそう。

でも……

蒼は遥か遠く離れた場所で、ファンのために歌っている。





「唯ちゃんのおかげだよ」




蒼の言葉が忘れられない。






あぁ、蒼、会いたいよ。

会ってぎゅっとしたい。

その優しい笑顔が見たい。

あたし、こんなにも蒼から離れられないなんて。

こんなにも蒼に熱中しているなんて。



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