危険なアイツと同居生活





「あれ?唯ちゃん、意外と冷静だね」




ソフトクリームを食べながら蒼が言う。

あたしはそんな蒼を見上げた。

そして、グレーの帽子から覗くその顔にくらくらする。

あたしには蒼しかいないと再認識した。




そんな蒼はやっぱりカメレオンアーティスト。

庶民に溶け込みオーラがない蒼に、誰も気付くことなんてなかった。





「唯ちゃん!

俺、TODAYの曲おさらいしてきたよ」




なんて言う蒼。




「えっ……あたし、二曲くらいしか知らない」




それもサビだけ。




固まるあたしを見て、蒼は驚いた顔をした。




「唯ちゃん、それでもファンなの!?」



「ファン?

……ファンじゃないし」




蒼、何かすごく大きな勘違いをしている。




「あたしはF以外に興味ないし」



「えっ……」




蒼はソフトクリームから口を離し、ぽかーんとあたしを見ていた。

少年のような瞳で。




「うーん、何だか複雑だね。

唯ちゃん喜ぶかと思ったのに」




蒼はそう言って宙を見る。

蒼はあたしのためにTODAYのチケットを取ってくれたんだ。

そんなことを考えると、蒼に申し訳なく思ってしまう。

だから慌てて否定しようとしたが、




「でも、良かった。

これで唯ちゃんが隆太に取られる心配もないね」




いつもの笑顔で笑ってくれる。




何言ってるの。

あたしには蒼しかいないのに。




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