新宿のデカ
っていた可能性が高いからです」


 そう言って軽く息をつく。


 そして、


「課長、六本木の通り魔事件の方はマル被の浅倉がまだ捕まってませんが、しばらく六本木中央署に任せましょう」


 と言葉を重ねた。


「ああ。……トノさんはそっちの方、気にしてるのか?」


「ええ。所轄の刑事がどう動くか見るだけです。ひとまずじっと窺うまでですから」


「トノさん、所轄の警官は縄張りだけ知っておけばいいんだよ。俺も昔、先輩刑事からそう教わった」


 樋井も普段ずっとデスクの椅子に座っているのだが、胆の太いところはあった。


 この手の刑事が事件において一番執拗で、徹底しているのである。


 そう思っていた。


「課長、庶務に戻ります」
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