新宿のデカ
 もう用はないだろうに、と思いながら……。


 だが、押村は所轄に異動となった元部下を気に掛けているのである。


 ありがたいと言えばありがたかった。


 まあ、別に長い時間、電話で付き合えないので、短時間にしておいたのだが……。


 電話で押村が言った。


「月創会のヤマは一体どうなってるのかね?」


 ――あの件に関しては、公安が動いてます。私も怖くて仕方ありませんけど。


「君は所轄だったよな。すまん。公安は俺たち本庁刑事部の方が距離が近いね」


 ――ええ。……刑事部長は今、何をお考えで? 


「いろいろ考えてるよ。だが、上手く行くかどうかは分からないな。策を弄するのも仕事のうちだがね」


 ――くどいようですが、本庁公安部の捜査員にもしっかりやってほしいですね。所詮、古賀便文など、配下にいるヤクザ者を動かしてるだけです。あの教団に価値は一銭もありません。
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