新宿のデカ
「トノさん、ちょっと腕落ちたね」


「ああ。静止してる的、撃てないとなると、動体視力も落ちてるだろうな」


 本音だった。


 銃をまともに使えない刑事は、警官失格だ。


 いくら刑事事件などとは、ほとんど縁のない所轄の人間でも。


 ずっと感じていた。


 新宿中央署も、所詮は警視庁の所轄の一つである。


 動きが鈍くても、うるさく言われることはない。


 ただ、何かあれば、即出動だ。


 管轄区内で事件が起これば、である。


 いつも思っていた。


 署内での仕事が続くと。


 余計なこともやらされる。
< 253 / 810 >

この作品をシェア

pagetop