新宿のデカ
 殲滅とまでは行かなくとも。


 じっと事態の推移を見守っていた。


 神妙な感じで、だ。


 食事を取り終えた後、樋井が、


「トノさん」


 と声を掛けてきた。


「何ですか?」


「本当に本庁の人間たちはあの件に関して、君に何の通達もしてないんだな?」


「ええ、私も聞いてませんが。……課長、今判断を誤っちゃいけませんよ。先に関東六王会が摘発されたんです。羽野や衛藤を捕まえるのは後でいいじゃありませんか?」


「まあ、そう言われればそうだね」


 樋井もキャリア組とあってか、冷静さがある。


 元々所轄の刑事課の課長じゃなくて、署長とか副署長ぐらいにいても、おかしくはないのだ。
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