新宿のデカ
 邪魔な人間を消すのに、自分の手を一切汚さない。


 最悪だった。


 衛藤が殺人教唆で服役していた時、小菅監獄の刑務官たちは皆、ヤツの模範囚を装った行動に惑わされていたのである。


 拘置記録など、単に服役中の記録に過ぎない。


 そんなものは何もならないのである。


 おそらく出獄してから、また警察の世話になることを覚悟の上で、シャバで悪事をやらかすのだろう。


 性質が悪かった。


 実際、人を殺した羽野よりももっと悪い。


 警視庁広域指定七×二事件は片付かなかった。


 今でも、一課の刑事たちは羽野や衛藤の身柄を追っている。


 察していた。


 事件の規模の大きさと、その背後での事実関係の複雑さに。
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