新宿のデカ
 歌舞伎町の物騒さは知っている。


 あの街は欲望の渦巻く街で、内部ではいろいろあった。


 関東六王会以外の組も中に入り込んでいる。


 俺も思っていた。


 いくら警官でも、歌舞伎町は避けたい場所だと。


 確かにあの街の色に染まっている人間は、そう恐れないだろうが、俺も島田もさすがに手をこまねく面があった。


 ゆっくりする間などない。


 木曜の朝、出勤し、デスクに行ってパソコンの電源ボタンを押す。


 そして立ち上がる合間に、フロア隅のコーヒーメーカーでコーヒーを一杯淹れた。


 飲んでから、幾分気が楽になり、マシーンに向かう。


 キーを叩き始めた。


 隣に島田がいないのに気づく。
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