新宿のデカ
第44章
     44
 木曜も仕事が終わったのは、午後九時過ぎだった。


 署を出、新宿駅まで歩く。


 人ごみに紛れ込むのにも抵抗がない。


 しばらく署長の神名川がどう出るか、見守るつもりでいた。


 俺と島田をセットで警視庁に行かせるなら、それでも構わない。


 一課の知り合いは川倉や幸島など少なかったが、二課にはかつての同僚もいる。


 二課の課長補佐は小松なのだし、かつて直属の上司だった押村は今、刑事部長だ。


 多分、神名川と警視庁の人事担当者が折衝を続けているものと思われた。


「殿村は以前、二課にいたし、古巣に戻すとまずいだろう」とか。


 俺も思うのだった。


 二課に行けば、おそらくまた知能犯や選挙違反、それに企業犯罪などの案件を扱わされると。


 過去にやってきたにしては、何かと抵抗のある分野だ。
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