新宿のデカ
 当時、仕事上で知り合った検事に、相島(そうじま)という男性がいた。


 相島は検察官だったが、俺の失敗した選挙違反の捜査で検事の立場からフォローしてくれたのである。


 だが、その話が次席検事の岡崎の耳に入った。


 そして相島は東京地検を追われ、僻地である鳥取地検に異動となり、俺も警視庁を追われたというわけだ。


 その警視庁がもう一度、俺を引き受けるという。


 悪い話じゃないにしても、違和感はあった。


 あんな扱いを受けて、今更また戻れと。


 相島は今、鳥取地検の支部にいるという。


 昔のことを思い出しても意味がない。


 意味がないというより、人間は過去にあったことを思い出すと、トラウマになるのだ。


 また、別の場所に移されるんじゃないかと。


 気にはなっていた。
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