新宿のデカ
 人間は悪い過去を思い出すように、脳のメカニズムが出来ているからだ。


 そう考えると、自然の摂理だと思えた。


 人間の思考に無意味なものは、何一つとしてないと。


 新宿駅で地下鉄を降り、署へ向かった。


 日々辛いのだ。


 刑事という仕事は。


 だが、慣れが生じればそうでもなくなる。


 確かに二十年ほど前、警察学校を出てから、ずっと警官としてやってきた。


 もちろん、準キャリアなので、巡査部長からスタートしたのである。


 今でこそ警部だが、昇進試験は二度受けていた。


 巡査部長から警部補になる過程で一回、そして警部補から警部になる際、一回である。


 署の建物に入り、フロアに行くと、島田が来ていて、


「おはよう、トノさん」
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