新宿のデカ
「うん。だけど、本庁は今現在、尾花監察官を泳がせてるらしい。身内の調査をする人間が殺人犯と結託してたなんてバレたら、警察の信頼は地に落ちるからな」


「そもそも、横川検事総長はなぜ尾花監察官を使う手を考えたんだろうね?」


「簡単だよ。監察官が身内の不祥事を聴取しないで、記録さえ残さなければ、そっちの方に注意が行かないからね」


「じゃあ、横川検事総長は何か仕出かしたの?」


「ああ。……ここからはオフレコなんだけど、検事総長は羽野たちから強請られてたらしいんだ。十五年前だから一九九九年だけど、検察の捜査に重大な失態があったことをネタにな」


 島田がそう言って、声を潜める。


 俺もあまりにキナ臭い話なので、トーンを落とした。


「当時、平だった横川検事総長が記録したデータの中に検察の不正が残ってた。それを知った羽野和夫は横川と会って、強請ったらしい。関係省庁やマスコミにバラさない代わりに多額の現金を受け取り、それで生活してたみたいだ。そして直後から次々と人を殺して、挙句五人を殺害するに至ったらしい」


「何か、テレビドラマか推理小説みたいだね?」
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