新宿のデカ
 気に掛けてもどうしようもないのだが、人間だから気にはなる。


 そう思い、署に出勤した。
 

 新宿中央署刑事課は、つい先月まで利いていた冷房が利いてない。


 樋井が課長席にいて、島田がデスクでパソコンを開き、キーを叩いている。


 ふっと島田が目を上げ、


「ああ、おはよう、トノさん」


 と言ってきた。


「ああ、シマさん、おはよう。……早いね」


「うん。俺も仕事に打ち込んでるからな。朝、トノさんが来る前に一仕事してるよ」


「疲れない?」


「多少な。でも、俺もいつも思うんだ。人間、進むしかないって」


「そう?」


「当たり前だろ。人って後ずさりできないからね」
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