新宿のデカ
「なぜです?」と問う前に、神名川が、


「簡単なことだよ。警視庁付の監察官が逮捕でもされたら、損害が計り知れない。それに検事総長を失えば、検察庁が揺れる。今は黙ってじっと見てろ。俺も幾分我慢してるんだ。本来なら、告発されるべきなんだが」


 と言い、息をついた。


「分かりました」


 頷き、一礼する。


「部署に戻ってくれ。俺もやることがいくらでもある。警察官である以上、暇がない」


「分かりました」


 そう言って部屋を出、歩き出す。


 確か、神名川はノンキャリアで入庁し、警視庁に配属されて、幹部の下で働いてきている。
 

 思っていた。


 ノンキャリアでも警視正まで昇ったのは、実にいいことだと。
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