新宿のデカ
 俺も、樋井は考えが甘すぎると思っていた。


 キャリアだから、出世したいという欲望がくっきりと見えてはいるのだが……。


 その週も金曜になり、昼、持ってきていた昼食をフロア内で取っていると、島田が、


「トノさん、連休中はどうやって過ごす?」


 と訊いてきた。


「多分、寝るだろうな。普段、何かと寝不足なんだし」


「俺も特に行くところないから、自宅でゆっくりしてようって思ってるよ」


 島田がそう言って立ち上がり、フロア隅のコーヒーメーカーでコーヒーをカップに二人分注ぐ。


 そして持ってきてくれた。


「ああ、ありがとう」


 そう言い、カップに口を付けると、苦い。


 いつも昼過ぎは眠気が差すから、これぐらいがちょうどいいのだった。

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