新宿のデカ
 そしてその日の昼食後、おそらく今年最後となるであろう、歌舞伎町へのパトロールに出かけた。


 疲れているのは事実だが、そうも言ってられない。


 島田が、


「トノさん、繁華街は人が大勢いるから、危ないよ」


 と言ってきたので、


「ああ、分かってる」


 と頷き、署を出て、歩いていった。 


 別に俺自身に刑事としての能力が低いというわけじゃない。


 捜査慣れした警官ですら、年末年始の歌舞伎町は危なくて怖いのだ。


 だが、ただそれだけのことだった。


 中央で大きな事件捜査がある反面、所轄レベルではこんな地味な仕事もある。


 そう割り切って行くだけだ。
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