新宿のデカ
第12章
     12
 大型連休が終わると、東京の街もまた夏に向けて、動き出した。


 島田が、署に来た俺に言う。


「トノさん、関東六王会のヤマは、本庁の人間に任せていいの?」


「あのね、シマさん。うちの署のマル暴だけじゃ、到底アイツらを叩き潰せないんだよ。任せるしかないじゃない。組対四課のデカたちに」


「ああ。まあ、そうだな。言われてみりゃそうだ」


 島田は心配性なのである。


 関東六王会関係者が放っておけば何を仕出かすか、考えているようなのだし……。


 ちょうどその週の金曜、警視庁管内に緊急入電があった。


「こちら警視庁。港区六本木にて、男性の変死体発見。他殺の疑いがあり、六本木中央署に帳場を設置する予定。繰り返す。……」


 俺もそれを聞き、島田に言った。


「六本木のヤマは俺たち新宿中央署には関係ないね」

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