管狐物語
そこには、次郎以外の他の4つのぬいぐるみが、やはり2本足で立ち、集まっていた…。
…何か、わいわいやっている…。
………
…今喋ったのって、ぬいぐるみ?
……でも、ぬいぐるみが喋るはずない…
…じゃ、じゃあ…このぬいぐるみみたいなのが、おばあちゃんが言ってた………
管狐…なの⁇⁈
桜の混乱をよそに、管狐達は、再開を喜びあっているようだ。
「俺、また人間の世界に来れたんだー!
うわっ、すっげえ嬉しい‼︎
皆、また、よろしくな!」
その管狐は、他の管狐の手をぎゅっと握り、ぴょんぴょん跳ねて喜んでいた。
まるで、小さい子供のようで、可愛らしい。
「…炎…うるさい…
黙ってろ…」
炎と呼ばれた管狐の手を、すぐに振りほどいた管狐は、眉間に皺をよせて、不機嫌そうに、座り込む。
その管狐の毛色は特殊で、通常は黄色なのに、日の光があたると、なぜか赤く染まったように見えたのだ…。
緋色…だ…
桜はその不思議な色に、一瞬目を奪われ、その管狐を見たが、視線を感じた管狐は、イライラしたように、桜を睨みつけた。
桜は、はっとして、急いで目をそらした…。
…こっ、怖い…
手のりサイズの小さな狐なのに、睨まれると、背筋がぞくぞくした。
やはり、ただの狐ではないらしい。
まだ固まったまま、動けずにいる桜の肩にすすっと、何かが駆け上り、次の瞬間頬に、ちくっとした軽い痛みが走る。
「ひっ、ひひゃい!」
痛みの原因を見ると、1番初めに声を上げた、管狐が、桜の頬をみょーんと引っ張っていた。