管狐物語
「ちょっと!いつまで惚けてる気⁈
さっさと僕たちを人間の姿にしてよ!」
頬を引っ張ったまま、火影と呼ばれた管狐は、不機嫌そうに、桜を問い詰める。
「ひっ、火影!姫になんてことを!
すぐに降りなさい‼︎」
次郎は桜の腕から登り、肩に乗っている火影を引きずり下ろしにかかった。
「っていうか、信じられないね!
初めてじゃない?こんな妖力ない主!
封印とけて、狐のまんまって!
普通は、すでに人間の姿のはずだけど!」
火影は、ずるずると次郎に首根っこを引きずられながらも、悪態をついていた。
「やめなさい!
混乱している姫になんてことをするんですか!
…本当にいつまでたっても、君は変わりませんね…」
次郎は、ふぅとため息一つ、火影を転がして、また桜に向き直った。
火影は転がされて、「ちょっと、何するっ…⁈」…と次郎に掴みかかろうとするが、他の管狐に羽交い締めにされ、次郎に手が届かず、じたばたしている。
「申し訳ありませんでした…姫君。
いきなりで、驚くのも無理ありません。
一つ一つ、お話させて下さい」
桜は、頬をつねられた痛みで、我に返り、なぜかこの不可思議な事態に、平常心になった。
まだ少し痛む頬をさすりながら、桜は次郎を見つめる。
「…話?…」
「はい!」
やっと桜が声を出してくれた事が、本当に嬉しいようで、次郎は優しく桜に微笑みながら、話を続ける。