管狐物語
次郎は、何もなかったかのように、微笑み、「それに…」と話を続けた。
「我らに、姫のお祖母様がお願いしておりましたから」
「…え…?」
「どうか、この子をお守り下さい…と。
それはもう、毎日…」
…おばあちゃんが…?
「そうだったな。
俺にも聴こえてた…」
甘く響く声をもつ管狐は、腕組みしながら、桜に優しく微笑む。
「あ!
やっぱり、烈さんにも聴こえてたか〜!
俺も!聴こえてたよ!
すっげえ、いいばあちゃんだな〜って思った!」
「まっ、確かにね…」
「………」
管狐達は、焰を除いて、深く頷いた。
「ですから、姫をお守りするのは、当たり前です」
ああ…やめて…
鼻の奥がツンとして、痛い…
次郎は、桜の手に優しく触れた。
「もう、一人じゃありませんよ、姫。
もう、一人で、泣かないで下さい…」
涙腺が一気にゆるむ…
こんな状態で、しかも管狐とかいう変な妖の前で泣きたくないのに…
私は、もう泣かないって決めたのに…
一人でだって、誰もいなくたって、生きてやる!って決めたのに…
思えば思うほど、桜の目から、たくさんの涙が滑り落ちていく。
嬉しいのか、悲しいのか分からない、そんなぐちゃぐちゃな感情が、押し寄せて、涙になる…。
嗚咽を噛み殺しながら、桜は久しぶりに泣いた…。
その間、次郎はずっと、桜の手に優しく触れていた。
時に、そっと撫でるように…。
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これが、私と管狐達のはじまりの物語