管狐物語
⒈ 管狐(くだぎつね)


カナカナカナ…
カナカナカナ…




夏の終わりを感じさせる蝉の声が、夕暮れと共に、優しく耳をくすぐる。


まだまだ汗ばむ昼間とは違い、この時間に縁側に出ると、秋を感じさせる風が火照った体を冷やしてくれる。




庭が見渡せる横に長い縁側に腰を下ろした少女、桜は足をぶらぶら揺らしながら、広い庭をなんとはなしに、眺めていた。


今年小学6年になり、来年はもう中学生の桜は、同級生の女の子に比べると、子供らしさはあまりなく、どちらかというと大人びて見える。


桜の肩ぐらいまである黒髪が、風に揺れ、前髪をすくう。




カナカナカナ…
カナカナカナ…



家の周りは、田んぼだらけで、近くにある家でも、歩いて15分はかかるほど田舎で、広い庭を見ていても、ただ、ぼーっとしてしまう。

山が広がり、田んぼが広がり、川があるいつもの景色は何も変わらなくて、そろそろ桜はあきてきた。

この家から見る景色も、自分もなんだかつまらなく感じる…





私、何してんだろう…







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