管狐物語
「だっ!誰⁈」
目を開けたそこには、人が立っていた。
外は夕陽に赤く染まり、立っている人は夕陽を背にしているので、顔がよく見えない。
ただ、その人の髪が夕陽のせいか赤く染まっているように見えて、桜はどきっとする。
どこかで、見たような…
「…きれい…」
ふと口からこぼれた言葉に、桜は驚き、口をふさいだ。
「…っ!」
その人は、その言葉にイラついたように、さっさと廊下を歩いて行ってしまった。
「なっ、何?…今の…」
桜は、ゆっくりと身体を起こした。
そこは、見慣れた祖母の部屋だった。
なぜか桜は布団に横になっていて、まぶたが重かった。
まるで、泣いた後のように…。
「私、どうしたんだろう…」
おばあちゃんの家に着いて、掃除を始めて…
それで……
ドタドタと、人が走る音がして、ピタッと止まった。
「おっ、焰!桜、起きたか?
って、おい!どこ行くんだよ!
焰!」
廊下から声がして、桜はますます混乱する。
「⁇」
この家には、自分1人だけのはずなのに…
しかも、男の人の声…
「あ!桜、目、覚めたか?」
空いた障子から、ひょこっと顔を出した桜と同じ年ぐらいの男が、人懐こい笑顔で微笑みかけた。
「ひゃっ⁈」
桜は驚いて、かけ布団を上まで引っ張り上げる。
「だっ、誰?なんで?どうなってるの?ここ、どこ⁈」
「落ち着けって、桜!」
その男は言いながら、桜に近づいて来る。
「ちょっと!近づいてこないでー!」
「分かった!
分かったから、これ以上近づかねぇから、落ち着けって!」
両手をぶんぶん振って、桜を落ち着かせ、部屋の入り口布団であぐらをかいて、その男は座った。
近づかないで!と言われたにも、関わらず、桜を見てにこにこ笑う。
桜はその様子を見て、少し緊張を解く。