管狐物語
はぁ…と、桜の腕を掴んだまま、炎はぐったりとうなだれた。
「…良かった…。
また一から説明しなきゃいけねぇかと思った…」
「ご、ごめんなさい。
でも、今はちゃんと理解してます。
夢じゃないって」
炎は、にっこり笑って、桜の腕を離し、すっと右手を差し出した。
「そんじゃあ、改めて!
俺、炎! よろしく!」
「はっ、はい!よろしくお願いします!
炎…さん…」
桜は、炎の手をぎこちなく、握り返した。
「やめろよ、炎さんなんてへんな感じだから。
炎でいいって」
あははと笑いながら、炎は桜と握手した手を上下に振る。
「あ…
じゃあ、炎…くん…?」
「はは!
まあ、それでいいよ!」
炎は、嬉しそうに笑い、桜もつられて、なんだか久しぶりに笑った。
炎が、笑っている桜をじっと見つめ、優しく微笑んだ。
「うん。
やっぱ、笑った顔、すげぇ可愛い」
「なっ!」
突然の事に、桜は顔を真っ赤にして俯いた。
男の人に、そんな事言われたのが始めてで、どうリアクションをとっていいのか分からない…。