管狐物語
「さてと、桜と遊ぶのも楽しいが、そろそろ片付け手伝わねぇとな。
あの散らかりようは、次郎さんだけじゃ無理だろうし」
烈は言いながら、すっと右手を桜に差し出した。
桜は赤い顔のまま、その手につかまり、立ち上がった。
「あ、でも、えっと、焰っていうヒトも残ってたから、多分手伝ってるんじゃ…」
「あの焰がやるかよ…。
さっきの飯中の機嫌の悪さ、見ただろ」
確かに、なんだか機嫌が悪そうだった。
桜には身に覚えがないが、自分をいやに毛嫌いしているような態度に何度も怯んだ。
あの最初から桜を嫌っているような皮肉な言い方をしていた、火影でさえ、桜とは目を見て言葉を交わしてくれたが(…ほとんど嫌味を言われただけだが…)、焰はほとんど目も合わせてくれなかった。
「…私、何か気にさわること言ったんでしょうか…」
烈は頭を軽く掻きながら、う〜んと唸った。
「…いや。
桜がどうこうって問題じゃねぇんだよ。
あいつは、きっとどんな主でも、今は認められねぇんだろうな…きっと」
最後の方は、自分に言い聞かせるような小さな声で、桜には聞こえなかった。
「え?」
「いや!なんでもない。
ほら、焰の事なんか気にすんなよ!
行くぞ」
ぽんっと桜の背をたたき、烈は部屋を出て行く。
桜はわけも分からないまま、自分も烈の後を追った。